葬儀や法要におけるお布施は、大切な故人への最後のお別れの場で、感謝の気持ちや哀悼の意を表す大切な行為です。しかし、その金額やマナー、書き方、渡し方について疑問や不安を抱くことも多いでしょう。
お布施の相場は一体どれくらいなのか、お布施袋に何を書けばいいのか、そしてどのように渡せば礼儀正しいのか。
この記事では、葬儀や法要におけるお布施の意味や相場、お布施袋の書き方、渡し方について詳しく解説します。悩みや疑問を解消し、大切な場面でのお布施を心からの感謝の気持ちで行えるようになることが大切です。
葬儀や法要の際のお布施ってなに?

本来の「お布施」の意味は?
お布施は、仏教においては、仏や僧侶、あるいは困っている人々に財物や労力などを施すことです。
お布施には、大きく分けて以下の2つの目的があります。
慈悲の実践
お布施は、困っている人々を助け、慈悲の心を育むためのものです。財物や労力を施すことで、相手の苦しみを軽減し、幸せに導くことができます。
修行
お布施は、仏道修行のひとつである「六波羅蜜」のひとつです。六波羅蜜とは、仏教の修行の基本となる6つの徳目のことで、布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧を指します。
お布施は、自分自身の欲や執着を捨て、無欲無我の境地を目指すための修行です。お布施をすることで、利己的な心を捨て、他人を思いやる心を育むことができます。
具体的には、お布施には以下のようなものがあります
- 寺院や僧侶へのお布施
- 困っている人への金銭や物品などの支援
- ボランティア活動
お布施は、仏教徒にとって重要な行いの一つです。お布施をすることで、慈悲の心を育み、より良い人間になれるでしょう。
また、お布施は、寺院や僧侶の活動を支えるという意味もあります。寺院や僧侶は、仏教の教えを広め、人々を救済するために活動しています。お布施をすることで、その活動を支え、より多くの人々が仏教の教えに触れることができるのです。
なお、お布施は、金額や頻度に決まりはありません。できる範囲で、喜んで行うことが大切です。
葬儀や法要の際のお布施はなんのためにあるの?
葬儀や法要の際のお布施は、以下の2つの目的があります。
僧侶へのお礼
葬儀や法要では、僧侶が読経や戒名の授与などを行い、故人の冥福を祈ります。お布施は、そのお礼として渡すものです。
寺院の維持・運営費
お布施は、寺院の維持・運営費としても使われます。寺院は、仏教の教えを広め、人々を救済するために活動しています。お布施をすることで、その活動を支えることができます。
具体的には、以下のようなことに使われます。
- 読経や法要の費用
- 寺院の修繕費
- 寺院の運営費
- 僧侶の生活費
- 仏教の教えを広める活動費
葬儀や法要のお布施は、故人や遺族、寺院にとって、大切な意味を持つものです。
なお、お布施の金額は、地域や宗派によって異なります。また、故人の立場や関係性によっても、金額が変わる場合があります。
一般的には、葬儀のお布施は、読経料と戒名料の2つに分けられます。読経料は、僧侶が読経や焼香、祝詞などを行ったための費用です。戒名料は、故人に戒名を授与してもらったことに対する費用です。
法要のお布施は、読経料と御膳料の2つに分けられます。読経料は、法要で僧侶が読経や焼香、祝詞などを行ったための費用です。御膳料は、僧侶の食事代として渡すものです。
葬儀や法要のお布施は、僧侶に直接渡すのではなく、遺族代表者が僧侶の前に座って渡します。お布施を渡す際には、お礼の言葉を述べるのがマナーです。
お布施の相場
法事・法要のお布施
法事・法要におけるお布施の平均相場は、通常、3万円から5万円程度とされています。しかし、年忌法要の場合、以下のように一般的な相場が設定されています。
- 一周忌: 3万円から5万円
- 三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌、五十回忌: 1万円から5万円
法事・法要でのお布施の相場とお車代としてのお布施の相場を表にまとめます。
お布施の種類 | 相場 |
---|---|
法事・法要 | 3万円~5万円程度 |
お車代 | 5,000円~1万円程度 |
以上が一般的な相場となりますが、地域や宗派によって相場は異なる場合があります。
「繰り上げ初七日法要」は、通常の初七日法要に加えて、3万円から5万円ほどのお布施が追加されることが一般的です。この「繰り上げ初七日法要」とは、本来は故人の臨終から7日後に行われる初七日法要を、葬儀の日に合わせて行う法要のことを指します。現代では広く行われており、亡くなった方の魂を慰める大切な儀式とされています。
初七日法要自体は、故人の霊魂が冥途の旅から戻る時期とされ、その日に法要を行うことで、故人の魂を供養し、安心させると信じられています。このため、初七日法要には親しい人々が集まり、お布施を包み、故人への感謝と尊敬の意を示します。
「繰り上げ初七日法要」は、葬儀の際に初七日法要を同時に行うことで、遠方からの参列者や仕事などで忙しい人たちにも参加しやすくなります。そして、お布施についても、通常の初七日法要のお布施に加えて、追加のお布施が行われることが多いのです。これにより、故人への敬意を表すと同時に、故人の魂を供養し、家族や友人の支えを受ける場として、「繰り上げ初七日法要」は多くの人々にとって重要な儀式となっています。
※ 三周忌法要以降は、1万円∼5万円が相場になります。
納骨式のお布施は、平均1~5万円程度
納骨式は、故人の遺骨をお墓に納める重要な儀式です。この儀式には通常、僧侶による読経が含まれます。故人の魂を安らかに送り、家族や友人と共に感謝の気持ちを表すために行われます。
納骨式におけるお布施の相場は、一般的に3万円から5万円程度とされています。ただし、檀家の関係が深い場合や特別な要望がある場合は、それ以上の金額を渡すこともあるでしょう。このお布施は、僧侶や寺院への感謝のしるしとして捧げられます。
また、お墓を新たに建てる際には、開眼法要や回忌法要など別の儀式を同時に行うことがあります。これらの儀式には別途お布施が必要とされ、一般的には2万円から3万円ほどが相場です。宗教によって異なる場合もありますが、神式では仏式と同様の相場が一般的で、キリスト教の場合は1万円から5万円程度が一般的です。
納骨式には、僧侶を呼ぶ際にも考慮すべき費用があります。まず、僧侶への御車代があり、一般的な相場は1万円です。また、納骨式の後に食事会に僧侶が参加しない場合、御食事代が必要となり、相場は1万円です。
これらの費用は、僧侶に感謝の意を示すと同時に、儀式を円滑に進行させるために包むことが一般的です。大切な人の納骨式や関連する儀式では、適切なお布施を行い、敬意と感謝の気持ちを表しましょう。
お布施袋の書き方
お布施袋は、故人や法要へのお布施を包むための大切なアイテムです。お布施袋には、一般的に以下のような書き方が行われます。
表書き
お布施袋の表面には、故人や法要の名前や日付を書きます。通常は、「お布施」という文字とともに、ご遺族や主催者が希望する表記を使用します。これにより、お布施袋の目的や対象が明確になり、お布施がどの法要や葬儀に対して捧げられているのかが一目で分かります。
袋の裏書き
お布施袋の裏面には、贈り主自身の名前や住所を書くことがあります。これにより、お布施が誰から来たものなのかが識別され、お礼状や領収書の送付先としても利用されることがあります。贈り主の情報を明示することで、感謝の気持ちを伝える手段となります。
書く際のポイントは、はっきりと読みやすい文字で書くことです。筆記用具やインクの色は、一般的には黒や青が使用されます。読みやすい書体を心がけ、清潔な印象を与えるようにしましょう。
一方で、地域や宗派によっては異なる慣習やマナーが存在することもあります。そのため、葬儀や法要の主催者や関係者からの指示に従うことが非常に重要です。また、葬儀や法要の場で配られるお布施袋は、事前に用意されたものがあることもありますので、その場の状況に合わせて適切に対応しましょう。お布施袋の使い方についての指示に従うことで、敬意と礼儀を正しく表すことができます。
お布施袋の種類
お布施袋には、大まかに以下の4種類があります。お布施袋の種類は、用途や水引(装飾用の結び紐)の色・結び方によって異なります。
水引がないもの
水引がないお布施袋には、以下の2種類があります。
- 無地の封筒: 通常、白無地の封筒が一般的です。余計な印字が入っておらず、切手貼付けの欄や郵便番号を記入する部分など、余計な印字が入っていないものを選びましょう。水引が不要な場合に使用します。
- 御布施とすでに印字してある封筒: 御布施の文字やデザインがすでに印字された封筒で、水引が不要な場合に利用されます。
白黒の水引がついたもの
白黒の水引がついた袋は、一般的に「不祝儀袋」として知られています。不祝儀袋は、葬儀や法事などの弔事の際に使用され、水引の色と結び方が特徴的です。
黄白の水引がついたもの
黄白の水引がついた袋は、「御佛前袋」として知られています。御佛前袋は、葬儀や法事などの弔事の際に、故人の遺族に対して渡すお布施や香典を包むために使用されます。
銀色の水引がついたもの
銀色の水引がついた袋は、「御布施袋」として呼ばれています。御布施袋は、葬儀や法事などの弔事の際に、僧侶に対して渡すお布施を包むために使われます。
お布施袋の水引の色と結び方は、地域や宗派によって異なります。
水引の色
- 白黒: 弔事に使用されます。白黒の水引は、葬儀や法事の場でよく見られます。
- 黄白: 弔事と御佛前袋に使用されます。御佛前袋は、葬儀や法事の際に、故人の遺族に対して渡すお布施や香典を包むために使われます。
- 銀色: 弔事と御布施袋に使用されます。御布施袋は、葬儀や法事の際に、僧侶に対して渡すお布施を包むために利用されます。
水引きの結び方
- 結び切り: すべてのシーンで使用可能です。シンプルな結び方で、一般的な使い方です。
- あわじ結び: 弔事に使用されます。特に葬儀や法事の場でよく見られ、格式ある印象を与えます。
- 蝶結び: 慶事に使用されます。結婚式やお祝い事の際に見られることがあり、華やかな印象を持たせます。
お布施袋を選ぶ際には、水引の色や結び方を考慮し、具体的な用途に合った選択を行いましょう。また、地域や宗派の習慣に従うことが、適切な選択の一助となります。
お布施の表書きの書き方
お布施の表書きは、封筒の正面中央上部に縦書きで記入されます。以下は表書きの書き方の詳細です。
表書きの書き方
中央上部に「御布施」または「お布施」と書きます。 この部分には、お布施の内容を示すためのキーワードとして「御布施」または「お布施」が記載されます。
その下に、氏名をフルネームまたは「○○家」と書きます。 受け取り側が誰からのお布施であるかを識別するため、氏名をフルネームで書くことが一般的です。ただし、「○○家」と家名のみを書くことも許容されています。
注意点
- 浄土真宗の場合、表書きとして「御礼」や「読経料」などを使用しないようにしましょう。これらの表現は避けられることがあります。
- 金額は、旧字体の漢数字で記入します。現代のアラビア数字ではなく、漢数字を使うことが一般的です。
例文
氏名をフルネームで書く場合:
御布施 山田太郎
氏名を「○○家」で書く場合:
御布施 山田家
なお、市販のお布施袋には、表書きが印刷されているものも存在します。その場合は、印刷された表書きをそのまま使用することができます。お布施の際には、適切な表書きを選び、礼儀正しく記入しましょう。
お布施の金額の書き方
お布施の金額は、封筒の裏面に縦書きで記入します。以下は金額の書き方と注意点についての詳細です。
金額の書き方
中央より右側に、旧字体の漢数字で金額を記入します。例えば、3万円の場合は「金参萬圓也」と書きます。
注意点
「四」と「九」は忌み数とされるため、使用しません。これらの数字を含む金額は避けましょう。
- 金額は、1万円単位で包むのが一般的です。金額を端数なしの1万円、2万円、3万円などにまとめて記入します。
例文
3万円の場合:
金参萬圓也
なお、市販のお布施袋には、裏面にも金額が印刷されているものも存在します。その場合は、印刷された金額をそのまま使用することができます。
お布施の金額は、地域や宗派によって異なることがあります。また、故人の立場や関係性に応じて金額が変わる場合もあるため、葬儀社や寺院に相談することが賢明です。
お布施に使うお札に関する注意
お布施に使用するお札には、以下のポイントに注意しましょう。お布施は、感謝の気持ちを表す大切な行為です。
新札を使用するのがマナー
お布施には、新札を使用するのがマナーとされています。新札はきれいで整った状態であり、感謝の意をより尊重する方法です。ただし、葬儀の場合、突然の訃報が多いため新札でなくても問題はありません。
きれいな状態のお札を使用する
お札は、汚れや折り目がついていないものを選びましょう。ピン札などの痛んだお札は避けるべきです。
肖像画が表になるように入れる
お札を包む際には、肖像画が表になるように配置しましょう。これは、僧侶が金額を計算しやすくするための配慮です。
お札は同じ枚数を揃える
できるだけ同じ枚数のお札を揃えて入れるようにしましょう。同じ額面のお札が揃っていると、計算が迅速に行えます。
お札は中袋に入れてから包む
お札は、中袋に入れた後にお布施袋に包むのが一般的です。中袋は、お布施袋に同封されているものを使用しましょう。
お布施袋は水引が付いたものを選ぶ
お布施袋を選ぶ際には、水引(結び紐)が付いたものを選びましょう。水引は、慶事や弔事によって色や結び方が異なることがあります。
お布施袋の表書きは「御布施」と書く
お布施袋の表書きは、「御布施」と書くのが一般的です。これは、お布施が僧侶への感謝の意を示すものであることを表します。
お布施袋の金額は旧字体の漢数字で書く
お布施袋に金額を記入する際は、旧字体の漢数字を使用します。これは、伝統を重んじる習慣であり、お布施をより格式あるものとするためです。
これらの注意点を守ることで、マナーに準じたお布施を渡すことができます。感謝の気持ちを大切にし、敬意を示しましょう。
お布施をお渡しする際のマナーは?
お布施をお渡しするタイミング
お布施を渡すタイミングは、一般的に次の2つがあります。
葬儀の際に渡す
葬儀の際にお布施を渡すことが一般的です。この際、読経料と戒名料の2つが渡されます。読経料は、僧侶が読経、焼香、祝詞などを行った際の費用を指します。戒名料は、故人に戒名を授与してもらったことに対する費用です。
法要の際に渡す
法要の際にもお布施が行われます。この際、読経料と御膳料の2つが渡されます。読経料は、法要で僧侶が読経、焼香、祝詞などを行った際の費用を指します。御膳料は、僧侶の食事代として渡されます。
お布施は、遺族代表者が僧侶に直接渡すのが一般的です。具体的な渡し方は以下の通りです。
葬儀の際に渡す場合
- 僧侶が読経を終えた後、遺族代表者が僧侶の前に座ります。
- お布施袋を袱紗(ふくさ)に包んで、僧侶に手渡します。
- お礼の言葉を述べます。
- 僧侶からお布施を受け取った旨の返礼の言葉を述べられます。
法要の際に渡す場合
- 法要が始まる前、または法要が終わった後、遺族代表者が僧侶の前に座ります。
- お布施袋を袱紗に包んで、僧侶に手渡します。
- お礼の言葉を述べます。
- 僧侶からお布施を受け取った旨の返礼の言葉を述べられます。
お布施を渡す際には、袱紗に包んで渡すのが一般的です。袱紗は、風呂敷に似た布で、お布施を包むことで感謝の気持ちを乗せて運ぶ意味合いがあります。また、お布施袋にお札を入れる際には、肖像画が表になるように配置しましょう。これは、僧侶が金額を計算しやすくするための配慮です。
これらのマナーを守ることで、お布施を通じて感謝の気持ちを適切に表すことができます。
<まとめ>葬儀や法要の際のお布施の意味や相場、お布施袋の書き方、渡し方など
葬儀や法要でのお布施は、故人への最後の感謝と哀悼の意を示す重要な行為です。お布施の相場は地域や宗派により異なりますが、一般的には3万円から5万円程度が一つの目安と言えます。お布施袋の書き方は、表に「お布施」、袋の中には新札をきれいに入れて、裏には差出人の名前と住所を記入します。
渡し方も大切で、葬儀や法要の適切なタイミングで遺族代表者が僧侶に渡し、お礼の言葉を述べます。お布施袋は袱紗に包み、お札は肖像画が表になるように配置しましょう。
これらのマナーを守ることで、故人に対する最後の感謝の意をきちんと伝えることができます。